ネガティブな情報を優先的に真実と思い込む心理はなぜ起こるのか?
今回はその例をあげ、科学的に解説してみることにする。
一般的に人は、ポジティブな情報を仕入れてネガティブな情報を排除したい傾向にあるが、場合によってはその思いに逆らうことも少なくない。
例えばこんなケースがある。
ネガティブな情報を優先的に信じてしまう事例
あなたが女性で同性の親友がいるとしよう。その親友は、あなたにあなたが大切に思う彼がいることを知っている。そしてその親友からあるときこんなことを言われる。
〇〇君(あなたの彼)、この前△△(あなたもよく知っている場所)で可愛い女の子と楽しそうに歩いているとこを見たよ。
あなたはその事実を知らず、彼からもその時のことは何も聞かされていない。この事実を知らなかったあなたは、親友のこの言葉をどう受け止めるだろうか。
マヂで!?〇〇、浮気してるんちゃうの!?
いや、何かの間違いや。浮気は絶対していない。
自分を落ち着かせようと、必死に早まりそうな自分を抑えようとする自分がいるのに気づくはずだ。
あなたと彼の間に信頼関係が築けていれば、あなたは彼を信じて親友の言葉を聞き流すかもしれない。だが、どれだけ信頼関係が築けていても、そう簡単に「(実際に)見たよ」という親友の言葉を流せる人は少ない。
具体化された情報は信じやすい
人は情報が具体的であればあるほど、その情報を真実と捉えやすくなることがわかっている。例えば、「1日5分の〇〇で月に2キロ痩せる方法」と言われるより、「1日5分の〇〇で月に1.9キロ痩せる方法」と言われたほうが、より現実的で確かであると解釈しやすくなる。
今回の場合は、あなたもよく知っている「△△」という場所、「可愛い女の子」「見た」というキーワードが親友の言葉の信憑性を高めている。
信じたくないという気持ちに「(実際に)見た」という親友の言葉が被さり、事実だとしたら聞き逃せないという感情がネガティブな情報を受け入れやすくしているのだ。
では、なぜこういうことになるのかを科学的に解説していこう。
ポジティビティ・バイアス
人が人に対する印象を形成する場合、一般的にはポジティブな印象を期待する傾向にあることから、相手の印象もポジティブな方向へ片寄りやすくなる。これを「ポジティビティ・バイアス」という。
ところが、その中にネガティブな情報が混在している場合は、全体の印象にまでネガティブな影響を与える。
例えば、オレンジが詰め込まれたダンボール箱に腐ったオレンジが混ざり込んでいると、あるとき他の新鮮だったオレンジにまで腐食が伝染していることがある。
他にも、食事をしているときにペチャペチャ音を立てて食べる人がたまにいるが、そういうことに嫌悪感をもつ人は、それまでにどれだけの好印象を持っていたとしても、その一面が確認された瞬間に人格否定に入っていることがある。
ネガティビティ・バイアス
ポジティブな情報の中に異質なネガティブ情報がある場合、その情報に対して重要度が高いと判断することから注意を引きやすくなる。
これを「ネガティビティ・バイアス」という。
例としては、先にあげたオレンジの例や食事中に音を立てて食べる場合をイメージしていただくとわかりやすいだろう。ネガティビティ・バイアスは、道徳性についての判断を要する際には顕著に現れる。
おわりに
ポジティブな情報に囲まれている人にとっては、不安や焦りなどの原因にもなる、ネガティブな情報が入り込んでくることに恐れを抱く傾向があるのに対し、ネガティブな情報に汚染されている人にとってはポジティブな情報に期待する傾向がある。
営業マンなどにセールスをかけられるとき、良いことばかりを並べてくるセールスマンよりも、一つや二つ欠点や不利になる要素を混ぜてくるセールスマンのほうが信用が入りやすく、逆に商品を購入してもらいやすくなるという統計データも出ている。
男女間においてもそれは同じことがいえる。例えば、
○○さんは、清潔感があって、知的で、男前で、いい人だけど、女性に対してちょっと無知なところがあるんだよね。でも、付き合った女性を裏切るタイプではないし、ひとりの女性を最後まで大事にする人だよ。
そう言われると、男運がない女性や付き合ってきた男性にことごとく裏切られて傷ついてきた女性は、いい男性像をイメージするはずだ。映像の世界などで出てくる、サブリミナル効果やスプラリミナル効果の影響にちょっと近い部分があるかもしれない。
ある事柄において真逆の情報が混在したとき、人はバイアスによってかかる影響を完全に断つことは難しいものである。
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